HOLY'S BLOG

伝えること

今日は午後から編み物クラブです。

今朝歩きながら考えたことを書きます。

 

編み物クラブで私は、針を持つのも初めての方がいらっしゃると「編む」行為と構造をお伝えして、その後、手が動くかどうかは、その方を信じるしかありません。

 

「できない」を何度も繰り返しながら、それでも「できる」ようになるまでを、待ちます。

手の行為ほど、人が年を取ったとて、身につけるスピードが早いものはないと、自分自身の経験と感覚、そして伝える立場として見てきて、待てるようになりました。

それぞれの方が、今まで器用に手を使ってきた「それまで」から、新しい動きを習得することのなんと確実なことを。

動かした分だけしか上手にならないけど、動かせば確実に上手になる手を私たちは誰しも持っています。

自転車乗りの感覚と似ていて、私たちは、どこかで常に体のバランスを取ることに長けていて、例えば自転車にはじめて乗る時、バランスが取れなくて最初はあたふたするけど、一度乗れるようになると、体が覚えます。

長く乗らない時期があったとしても、少し乗れば「ああ、この感覚」でまた乗れるようになりますよね。

でも「昔取った杵柄」は、長距離自転車では通用しないのと同じで、編み物も「針は動かせるけれど」編み物筋肉は衰えているので、それを取り戻すためには、それなりの努力が必要になります。

私は、かつてブラスバンド部でクラリネットを吹いていましたが、数年ぶりに演奏するつもりが、すっかりクラリネット筋肉(主に頬と唇)が落ちていて1曲も吹き続けられず、人前で大恥をかいたことがあります。

 

 

先日伺った彦根でのWSで、たぶん80才近い女性の方が参加くださいました。白髪の上品な。

「若い頃、20年、30年ぶりで、長くやってないけど、昔取った杵柄でなんとかなると思うの」と仰る。

私は、正直、心の中では「それはどうかな」と思っていました。その間その日まで、一度も触ってはおられない様子。

WSがはじまると、彼女は手は動くものの、編めるけどぎこちなく、糸を割っておられたり、すっすと手が動かないことを気付かれました。

すっかりほどいてまた指でかける作り目からやり直します。

親指の増し目になると、理解するまでに時間がかかっておられるようでした。

彼女には、隣の周りの若い方が助け舟を出してくれていました。

私はみなさんの周りを回りながら、様子を伺います。

彼女がふと「甘く見過ぎていたわ」と小さく溢されました。

私は黙っていたけれど「気付いてくださった」と思いました。

そこから彼女が変わるんです。

時間はかかるけれども、粘り強く取り組むことによって、何度もほどきながら作り直し、挽回します。

多少の遅れはあっても、理解し、手の感覚を取り戻すと、ひたむきに編み続けられました。

彼女は、親指の増し目も理解して編み続けられました。

「わかった」という感覚になられた頃、私は彼女に話しかけました。

長く看護師を育てる教員として働いたこと。やっと自分の時間ができて、この場所の手仕事のWSに機会があるごとに参加しはじめたこと。

元々、物静かで謙虚な方なんだと思います。

終わるころには、周りの「いつもやってます」チームの若い方々にかなり近いところまで追いついておられました。

WSも終わりになって、私は彼女とその近くにおられる方と、LINE交換をおねがいしました。「助け舟」の女性が応えてくれます。

指まで編めてる方とその後もやりとりできれば、彼女は仕上げることができると思ったからです。

 

人はいつでも変われる瞬間を見せていただきました。

人は結局「姿勢」なんだと思います。

私はそれをみなさんから教わっています。

 

ひな祭り

母が作った雛人形を出してみた。

これはきめ込み人形といって、土でできた土台の上にのりて生地を貼って、自分で人形を仕上げる、というキットセットだったように記憶している。

高価な雛人形は買えないし、小さな場所でも飾れるという、母の工夫と工面だったのだろう。それでも将来、私に持たせて、という気持ちがあったのだろう。

 

先日伺ったお家で、可愛らしい雛人形を見せていただいて、

何年も仕舞いっぱなしだったけど、今日の今日、出す気になった。夜には仕舞うのだが、今日の自分ならそれができる。

いつも慌ただしくすぎてしまうし、ご馳走も何もないけども。

先日出先にいただいた日本酒を夜には飲んで、お祝いします。

本来の主旨とは変わっているけども、これまで元気で生きてこられた感謝の祝いとして。

「工藝という名の手袋」展終わりました

 

私から、見に来てくださったみなさまに感謝の言葉と、今回の展示の総括を書くはずが、READAN DEATの清政さんが、すべてを書いてくれました。

私はというと今日、会期中に頂いたお花を持って、彼岸も年末年始もほっぽり投げてた墓参りに行って来ました。ここまでが自分の中の一区切りでした。

長く風呂に浸かりボーっとした頭でiPhoneを開くと、自分がタグ付けされた記事があり、読んで泣きました。泣きました、と書くのは恥ずかしいことですが、落ち着いて、もう一度読み直しても、やはり泣きました。

墓参りに行ったことも、清政さんの記事を読んで泣いてしまったことも、個人的なことで、書くつもりなかったけれど、正直に書くしかないから書いています。

「工藝という名の手袋」は、長年あたためてきた企画ですが、まだ生まれたばかりの、私にとっての課題です。

また違う街で、この製作展示をしたいと考えています。
その時には、もっとうまくなっていたい。
今回オーダーいただいた中でも、新しい物ができそうです。それはまた、みなさんに見ていただきます。

この企画は、READAN DEAT だったからこそ実現しました。
私の仕事をしっかり見続けてくれる人がいる場所だからこそ。
もしかしたら、世間の大波に出たら、飲み込まれるかもしれません。
飲み込まれてもいいから試したい。
大きく背中を押してもらいました。

足を運んでくださったみなさま、深く深く感謝いたします。本当にありがとうございます。

そして、仕事仲間という身内ごとではありますが、清政さん、ありがとう。

#Repost @readan_deat with @use.repost
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HOLY’S 保里尚美「工藝という名の手袋」展、昨日終了しました。会期初日は、駒木根圭子さんとのトーク、2日目は編み込み模様のワークショップも開催し、全日在廊してくれた保里さん。年末の代官山と広島の蔦屋書店から続いた展示も無事に完走してくれました。

今回の個展タイトルに冠した「工藝」について、初日のトークのなかでこんな場面がありました。

「あえて工藝と名乗らなくても、保里さんが作る物はすでに工藝だと思っていました」

保里さんの作品はすでに工藝と呼べるものであり、使う人への細やかな配慮も込められた、民藝の精神が宿っていると、駒木根さんは感じていました。その一方で、これは民藝だ、あれは民藝じゃないというような、以前から言葉で括ることに違和感があったため、「見ている人はちゃんと見ているから、言葉で括る必要はないよ」と。

駒木根さんの眼差しに感謝しつつ、保里さんは

「世間一般から見たときに編み物は手芸で、値段をつけにくい。だからこそこのタイトルにしたところもあります」

この言葉は、若い頃に体調を崩し、「編み物」を生業として選ばざるをえなかった保里さんの、長年歩んできた道の険しさとプロとしての自負を感じさせるものでしたが、工藝に託した想いはそれだけではありませんでした。

「編み物の技術者としてどこまで技術を突き詰めることができるか試したかった」

『働くセーター』から始まった本づくりは、できるだけ沢山の人に編んでもらうことが大前提。作りやすさと分かりやすさを重視した作品が掲載されていますが、今回の個展は技術者としての現在地を示すものでもありました。「まだまだ上達したい」という保里さんの、背中を押す工藝という言葉。それは、新たなステージで編み物へ取り組む、決意表明でもあったと感じました。

お買い上げいただいた方には紐をご用意してお届けします。オーダーいただいた方も楽しみにお待ちください。

#保里尚美
#工藝という名の手袋

 

広島蔦屋書店1 day lesson

今日は、広島蔦屋書店
『手袋と街』(文化出版局)より基本5本指手袋の1day lesson WS でした。

ご参加いただいたのは、すてきなみなさんばかり。終始、穏やかで真剣、あっという間の1日。すごく充実したWSとなりました。
ご参加くださったみなさん、ありがとうございます!

1dayだからこそ、伝えられる内容がありますね。
今日1日だけで、目に見えて上達される姿を見せていただきました。

手袋の輪郭が見え始めると、ご自身が編む手袋に対し、「かわいい」の声と、
5本指手袋が、自分も編めるんだという自信が芽生えはじめていましたね。

まだまだ伸びしろありますよーーー。

姿勢のこともかなりひつこくお話ししましたが、時々思い出していただいて、体と心のリセットを行なっていただけたら、いつまでも編み物が楽に楽しみながら編めるはずです♪

みなさまの完成を楽しみにしています!

レッスンが終わるとみなさん、LINE交換をなさっておられました。それもまたとてもうれしい。

フェアは、1/30まで続きます。

来週はいよいよ青木慶則さんとのトーク&ライブです!

今日の編み物クラブにて

働くカーディガンの前立てを仕上げたいHちゃん。前立ては、前に働くベストで1度やったきり。
手が進みません。
本を見ながらやってはみたものの、引き上げ編みをし終わると目数がひとつ多くなりました。
できてるような気はするけれど、何か違う。

引き上げた目は斜行しており、多分ふたつめの2目一度がうまく行ってない気がしました。

私は、別鎖で作る前立てのみを、身頃と接続させないで、Hちゃんに見てもらいながら、やってみました。

その後、Hちゃんにも、まず前立てのみを編んでもらいます。

うまくできると、今度こそ、左前立てから、身頃に編み付ける作業も加えます。
今度はうまくいきました。

自分が何がわかってないかわからなくて、手が止まる時。

まずわからない箇所を「取り出してみる」ことが大事です。

「取り出す」は「細分化してみる」と同じ意味ですね。

別鎖で編む前立てのみを正しく作れるかをまず確かめて、身頃と繋げる作業へ。

二目ゴム編み止めも同じく。
袖口や裾で難しいと思ったら、まず二目ゴム編み止めキットを自分で作ってみる。

ただ二目ゴム編みを(輪編み目でも往復編みでも)余った糸で編んでみて、それとは別色の糸をとじ糸にして色を替えてとじてみる。

これも自分がわからない箇所を「取り出す」作業です。

あとは、よく観察する。
目の構造を理解すると、何をするでも、文字文面を追うのではなく、表記された編み目記号が何を言いたいか、
わかってくると思います。

前立てのHちゃん「前回のこと、全然覚えてないと思ったけどやったら、なんとなく思い出せて、前回よりも理解が深まりました」

といただきました。
そうですね。。
「全然思い出せない」訳ではないんですね。
「取り出し」てみると、自分がわかってた部分が見えてくる。

理解が深まる。
仕事が深まる。

今日は、大切なことを教えてもらいました。
Hちゃん、ありがとう。

 

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