もっと『働くセーター』へ 第0回

「もっと『働くセーター』へ」 〜書ききれないこと〜 第0回、開催いたします。
日々、編み物クラブやSNSで「『働くセーター』◯枚目を編みます」というご報告をいただくたび、本当にうれしく感謝しています。
その一方で、本には書ききれなかったこと、Instagramや文章では伝えきれない小さなポイントが、たくさんあることをもどかしく感じています。
私自身、オーダー制作を重ねる中で、新しいサイズを割り出す方法や考え方、着心地をより良くするための細かな工夫を、少しずつ積み重ねてきました。
また、人それぞれ体つきが違うように、編み方にも癖や得意不得意があります。
だからこそ、その方に合わせてお伝えしたいことが、写真や文章だけではどうしても伝えきれません。
そこで今回、『働くセーター』を何枚も編んでくださっている方に向けて、少人数でじっくりお伝えする講座を開くことを思い至りました。
まずは、いつも編み物クラブを行っているHOLY’Sの仕事場で開催します。
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「もっと『働くセーター』へ」 第0回
日時:7月30日(木)11:00〜16:00(昼休憩あり)
定員:5名(最少催行人数2名)
受講料:10,000円
ご希望の方には、アベック・ル・ソレイユさんのサンドイッチとコーヒーをご用意します。(+1,000円)
コーヒーは、MOUNT COFFEEさんオリジナル sweater blend を。
ご希望の方には、お持ち帰り用の豆も、ご用意いたします。
対象
『働くセーター』を1枚以上編まれた方。
当日は、これまで編まれた『働くセーター』を1〜2枚お持ちください。 編み方やサイズ感、着心地などを、一緒に確認しながら進めます。
また、普段お使いの編み針やマーカーなどの道具もお持ちいただけましたら、それぞれの編み方に合わせてお話しできればと思います。

参加をご希望の方は、HOLY’Sホームページ「workshop」の申し込みフォームより、「7月30日参加希望」と、お昼ご飯ご希望の有無を、ご明記ください。
*キャンセルにつきましては、編み物クラブと同じキャンセル規定とさせていただきます。
お申し込みの際は、あらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
*アクセスは、「workshop」をご参考くださいませ。
みなさまにお会いできることを、心より楽しみにしております。
HOLY’S 保里尚美
あるライターさんに捧ぐ『ピアノ調律師』という絵本について
ゴフスタインの絵本の中に『ピアノ調律師』(現代企画室)という作品があります。

両親を亡くしたまだ小さな女の子、デビーは、腕の良いピアノ調律師のおじいさんと一緒に暮らしています。
おじいさんは、デビーのために朝食を用意し、ピアノを弾くことを教えます。
おじいさんは、デビーにピアニストになってくれることを望みますが、デビーは、おじいさんのような腕の良いピアノ調律師になりたいと思っていました。
彼らの街に、世界的ピアニストの演奏会が開催されることになりました。
おじいさんが、ピアニストのためにホールのピアノの調律をしている間に、デビーはおじいさんに内緒で近所のお宅にあるピアノの調律を勝手に引き受けてしまいます。
おじいさんはピアニストと共に、調律を続けるデビーを見つけると、デビーをたしなめ、そのお宅に詫びを言い、また改めてピアノを調律し直す約束をしました。
その一部始終を見ていたピアニストは、おじいさんに、デビーをピアニストに育てるより、ピアノ調律師になることを叶えてあげた方が良いことを諭します。
デビーとおじいさんはその夜、ピアニストのすばらしい演奏を聴きます。
デビーはピアニストの演奏より、ピアニストがいくら激しく弾いても音程のびくともしないピアノの音色に感動したのです。
デビーは、おじいさんのような腕の良いピアノ調律師になるために、次の日の朝から、自分のことは自分でするようになるのです。
ピアニストは、デビーに上等な調律道具を送ることを約束してくれました。
・・・
この本の帯には、ピアニストの言葉「人生で自分の好きなことを仕事にする以上に幸せなことがあるかい?」と書かれています。
私は、誰にしもの人生がそんなに素敵で、単純なものではないと思いますが、自分にも同じような体験があったことを思い出しました。
私は10代の頃から20代にかけて、自分で作詞作曲をするシンガーソングライターになりたいと思っていました。
それを望みながら、生活のために昼間はバイトに明け暮れる日々で、そんな中で「楽譜工房」という楽譜浄書の仕事につきます。
音楽には毎日触れているけれど、私が作ったのは、楽譜でした。演奏する人が見やすいように余白の美しい楽譜を作る仕事です。
それからいろいろあって、私は今、編み物を仕事にしています。→*
(詳しくはこちらをご覧ください。取材していただいた記事です)
音楽が大好きだったけど、私はその音を作る方の仕事に就き、そして今は、子供の頃から息をするように身近にあった装いを作る仕事をしています。
編み物は手段の一つで、「装いを作る」中で、1番手頃で、お金が掛からず、そして何より私が1番得意なことだったのでしょう。
それは自分の意思とは無関係に、神様からのギフトとして、私に与えられたことと今は考えています。
決して自分の人生にオッケーが出せるほど、達観も納得もまだまだできていませんが、
ふとこの絵本を通して出会ったライターさんとのやりとりを思い出す中で、ゴフスタインが教えてくれた使命みたいなものに出会うことについて、考えた朝でした。
働くセーター何度でも

着心地の良い『働くセーター』を編むには
最初の編み出しが大切になります。
別鎖の編み出し糸が、編み糸に対して細すぎないこと。
鎖編みの緩みが1段目の引き出しやすさに繋がります。
編みはじめの1段目が小さくなりすぎると、その後の編み目にも影響してしまいます。
また、衿から肩先へ向かって、このくらいの角度でゆるやかに広がること。
この広がりが、『働くセーター』の軽い着心地につながっています。

ラグラン線は、目の増やし方の割合を少しずつ変えることで、肩のラインに自然に沿うよう設計しています。
編み始めの数センチに、その後の編みやすさと、着心地のほとんどが詰まっています。
編み直しの先には、必ず違う景色が見えてきます。
雨音の中で考えるウールの効用を

連日続く雨を聴きながら針を動かしていると、
湿気のせいか、Shetland yarn独特の干し草の匂いが
いつも以上に立ち昇ってきます。
この香りが好きで編んでいると言っても過言ではなく、
セーターが編み上がり、仕上げ洗いをすると薄まるものの
それでもふわりと太陽を孕んだような残り香には、
他の素材では感じ得ない安心感があります。
先日、昨年のネパールを共にした友人に
「次の山には働くセーターをレイヤーにしたい」と宣言のようなつぶやきを送りました。
すると帰ってきた返事には、私もお会いしたことのある冒険家・新谷暁生さんは海でも山でもセーターを愛用したという。そのウェアについてのレポートが添えられていました。
その中の一節に線が引いてあって
「ウールなど天然素材は野外に必要不可欠な素材だ。
ウールはその繊維の特性から濡れても体温を保つ。」
とあり、またひとつウールの特筆すべき点を教えてもらいました。
そこで思い出したのが自分の体験で、
冬のある日、発熱しながらも編まなければならない、差し迫った仕事があり、私はシルクのアンダーシャツ、ネル生地のシャツを挟み、自分で編んだウールのカーディガンを着込んで仕事をしていました。
編みながら熱がピークに達し、身体中から汗が出ると、
自然と熱は下がっていきました。
仕事が一段落して休もうとカーディガンを脱ぐと、
カーディガンの背中一帯にびっしりと水滴が付いていました。
部屋にいたのだから、上から降ってくるわけもなく。
しばらく不思議だったけど、それは自分の汗でした。
シルクや綿を通って、ウールの外に汗がすっかり抜けたんだと合点しました。
ウールのおかげで、仕事も自分も命拾いしたような気持ちになって、保温性と防湿性を持つウールの恩恵にあやかったと、その日はつくづく感じていました。
今日仕事をしながら、新谷さんの言葉「濡れても体温を保つ」を思い出していると、
びっしょり汗をかくほどの高熱を出しながら、体を冷やすことなく回復に向かえたは、カーディガンのおかげで、
汗を掻いても体は冷えなかったということに、ようやく理解できたのです。
またひとつ、ウールの認識が深まりました。
自分の体で感じたことと、新谷さんの言葉が繋がった瞬間でした。
そんなことを考えながら、
プールの底にいるような雨音ばかり響く部屋で、針を動かしています。
私とtokyobike

私も愛用するtokyobike。
まさか自転車のことで取材をお受けするとは、夢にも思っていませんでした。
この写真は、tokyobikeのカメラマン橋原さんに撮っていただいた写真の中の1枚です。
私にとって自転車に乗ることは、作ることと同じで、生きる上で、すぐそこにあったものだからです。
あの1日は「取材をお受けする」というよりも、tokyobikeの谷澤さん、橋原さん、そしてライターの瀬谷さんと、それぞれの生き方と対話を重ねる時間でした。
エベレストベースキャンプへのトレッキングが途中棄権となったあの日から、私はそれを引き金に過去の様々な「途中で取り上げられてしまったこと」に引き戻されました。
みんなを待つ間の長く続いた無音の時間に、自分の立ってる場所により敏感になり、自分の感覚と言葉を繋ぐことが難しくなっていました。
(このことは、また改めてちゃんと書ければいいのだけれど。)
自分のこれまでの歩みを一緒に辿っていただくことで、(出口が見えていないわけではない)並んで歩いてもらったような感覚になりました。
取材後、原稿を何度かやりとりさせていただいた中で、瀬谷さんの言葉「取材とは、相互の気付きを分け合う対話のようなもの」という言葉をいただきました。
とても丁寧に言葉を、写真を、紡いでいただきました。
この出会いに心より感謝しています。
ぜひ下記のリンクから、よかったらお読みくださいませ。
#Repost @tokyobike_jp
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連載「Life on two wheels 」自転車の話をしよう」。
第5回は、『HOLY’S』の屋号で活動する、ニット作家の保里尚美さんに、自転車からはじまる人生のお話を聞きました。
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真夏にニットを編むのは暑いだろうから、エアコンをガンガン効かせてるんですかって、聞かれることがあります。でも、私にはそれができなくて。夏にそんな楽をして、自分は冬の寒さに耐えられるものを作れるのかな、と思います。
夏の暑さも、冬の寒さも、しっかり感じていなければ、本当に着心地のいいものはわからない。自分の編むものが嘘になってしまうような気がするんです。
(本文より一部抜粋)
tokyobike 谷澤弥恵子