林央子さんとのこと(働くセーターの訳)vol.1
林央子さんとの出会いから、私が私の「なぜ『働くセーター』だったのか、自分を辿ることになる。それを記していきたい。
長くなりそうなので、少しずつ綴っていく。
まず、よく見つけてくださったなと思う。きっかけとなる、間接的に繋いでいただいた方に感謝している。
林さんとの対話は、時間が経つと共に深まり進んでいくのに、私は、私が仕舞い込んだ過去の記憶を辿ることになる。それは、私の原動力とも言える。
2021年年末、私のInstagramに「林央子さんにタグ付けされました」のお知らせが届いた。
私は声が出るほど驚いた。
無印良品京都山科店での「働くセーターフェア」における私の選書について、林さんはお知り合いから送られた写真を、Instagramで取り上げてくださったのだ。
「働くセーターフェア」は、2021年10月、京都でできた冊子「a sweater.」(元はインスタグラムのアカウント「旅する働くセーター京都編」がはじまりだった。)に登場する方々を紹介するイベントで、mujibookのコーナーでは、そこに登場する方々が「働くこと、を支える本」をコメント付きで選書していた。私は、林央子さん訳「エレン・フライスの日記」と林央子さん著「つくる理由」をあげていて、それを見つけて下さった京都在住の林さんのお知り合いが、写真と共に、林さんにお伝えくださって、という経緯だった。
フェア自体は、その年の10月からはじまり、私は今まで以上に慌ただしい冬を迎えていた。東京・京都での展示が終わり、広島に戻り、展示後のさまざまな雑用をひとつずつ終えながら、製作に向かい、年明けには地元、広島でも3日間限りの「冬のおくりもの展」を控えていた。
私が選書した2冊は、とにかくその時、1番に気に入っていて、「エレンの日記」は、装丁が美しい。
2020年夏、ちょうど林央子さんが作っておられる雑誌「here and there vol.14」と同じ時期に発売されていた。いつも通う本屋「READAN DEAT」で、まるで分身のようなその2冊を一度に買うにしては、ちょっと大きい金額で、迷うほどだった。
結局、日を変えて2冊とも手に入れるのだけれど、私はなぜこんなにもこの2冊に惹かれるのか。
「エレンの日記」は、雑誌「Purple」を作ったエレン・フライスさんの日記で、その訳をしているのが林央子さん。
林央子さんは、雑誌「here and there」を作られていて、元は、資生堂季刊誌「花椿」の編集者だ。
まず「エレンの日記」をうちにも持って帰る。抑揚を抑えた文章、エレンの視線から紡がれる言葉と風景描写に、すぐに大好きになってしまった。
人とのやりとりとその距離感。性別や年齢を超えた敬意と友情をどう持ち続けていくか。日々は何気ないことに溢れているけれど、自ら磨いていけるし、決して高価ではない、身近にある美しさについて手に取るように感じ、また自分の手で作っていけるものなんだと気付かせてくれる本だった。
程なく「here and there vol.14」も手に入れて、ようやく私は佇まいの似た雑誌と本の理由が分かってくる。
私が気にしてることを覚えてくれててREADAN DEATの清政さんが差し出してくれる「花椿」の訳も。
私は写真集やファッション、デザインについて、自分がこんなにも惹かれているとすら気付いてなかった。
製作と生活に追われていたので、情報を追うこともなかったけれど、今になると必要な分だけ、キャッチしていたんだと思う。
流行や商業主義ではないファッションについて。
私は「洋服が好き」からはじまり、たまたま仕事となった「ニットを作る」生業から、感じ考え続けていたこと。
私が無印の選書で自分の選んだ2冊について、コメントした言葉をここに記しておきます。
“「エレンの日記」エレン・フライス著 林 央子訳 アダチプレス
「心のひだ」とは、こんなにも繊細な物なのかと驚かされます。生活は自分次第で美しく出来うるものなのか。そして人との距離感。どこページも私にとって新鮮な湧水のようです。
「つくる理由」林 央子著 DU BOOKS
雑誌の編集に長く関わってこられた林さんが「つくる」行為における普遍性を、作り手との対話から、そしてご自身のうちなる声からもを探求し、綴られています。私が今、憧れのような気持ちで読み進めている本です。“