HOLY'S BLOG

学生寮バイト初日

学生寮の受付バイトが41日からはじまったことは、よく覚えている。何せ自分の誕生日だから。

 

3月に夜学を卒業していたから、学校の斡旋とも言えない。ただ友達がそのバイトを辞めるにあたり、次のバトンを受け取った。私のフリーター生活のはじまりだった。

 

初日は、大学職員で寮の事務職ベテランの女性に仕事を教えてもらう。まず机の上に貼られた寮生の部屋の割り当て表に目を通し、名簿を渡された。

名簿には、学部学科と実家のご住所、父親の名前と職業(これには正直驚いた。)、出身校が書かれていた。名の知れた進学校ばかり並んでいた。

 

受付のはメインの親電話と、その奥に子機が仕切りのあるカウンターに並んでいた。手前から1番、2番とはじまり、確か5台あったと思う。

電話がかかってくるとまず受付が出る。

「◯学部◯年生の◯◯くん、おねがいします。」

各階ごとのインターフォンで部屋番号と名前を呼び「いきます。」の返事があれば、1番から電話を保留する。ホワイトボードの番号に名前を書く。

いない場合、他の人がいないことを確認し「いませーん。」と叫ぶ声で「ありがとうございます」と返事をし、電話口の相手に不在を告げる。用件と名前、何時何分に電話があったことをメモに残し、部屋番号に分けられた郵便ボックスに入れておく。

 

受付のある4年生が住む2階だけは、受付け自ら確認に行くのだけど、そこはプライベートの場だから、なるべく足を踏み入れたくなかった。

寮生が不意にパンツ一枚で廊下に出てくることもあったし、部屋の様子も垣間見てしまう。きれいに片付いている部屋もあれば、そうじゃない部屋も。なるべく前だけをみて歩く。

二人部屋で、入寮時に割り当てられたペアが自然と相性良く、そのまま学年を上がっても同じ部屋で過ごす人もいたし、留学生を選ぶ人もいた。

数日前に寮に入ったばかりの1年生は、やはりまだ地方の匂いを残し、幼かった。

寮は男子寮で、顔のきれいな男の子が多かった。

「お金持ちは美人と結婚する」といつか母から聞いたことがあり、その息子たちだからと妙に納得した。

 

 

5階建てで、200人もの寮生が住んでおり、受付に座っていると、目の前の階段の行き来に、初日で人酔いをした。挨拶すべきか、スルーすべきか。受付の前を人の気配がすれば、一応顔は上げなくては。

 

午後を過ぎると総務部に寮生宛の郵便物を台車で取りに行き、部屋番号に分けられた郵便ボックスに入れることも受付の仕事だった。

4月から6月くらいまで、4年生宛の就職活動の資料や案内が山のように届き、それを仕分けるのは大変な仕事だった。大抵、時間のある寮生が手伝ってくれた。

あれだけ大量に届いていた郵便も、夏を過ぎるとすっかり収まる。

 

初日の夕方5時前になると、受付のある2階ロビーに寮生が集まりはじめ、そこら中、男子だらけになった。1年生から4年生まで、ライブハウス以上の密集率だった。

新しい受付バイトへの歓迎会、だったように思う。それ以上のことは何も覚えていない。

私は、アメ横で買った生成りのコットンセーターに、柔らかなデニム地のフレアスカートとアイリッシュセッターブーツを履いていた。長い髪を後ろで三つ編みしていたと思う。

あの日のアイリッシュセッターブーツ。

これもアメ横で、goliraというメーカーの。

一足だけがデッドストックで、当時の私が買える値段で売られていた。

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