2019.03.03
THE ABSENCE OF TWO
写真家、吉田亮人(あきひと)さんを知ったのは、2月、READAN DEATのトークイベントのお知らせで、写真は門外漢なのに、そのテーマに目が離せなくなった。
吉田さんは、ご自分のお祖母様と、従兄弟であたる大輝くんとの仲睦まじい生活を写真に収め、その終焉はお祖母様の死によって迎えられるものと当たり前のように思っておられた。
突然の大樹くんの失踪、一年後の発見は自死の姿で見つかった大輝くんは、遺書も残さず森の中で亡くなっていた。
真実はお祖母様も知ることとなり、残されたお祖母様はその一年8ヶ月後、天寿を全うし、眠るように亡くなる。
大輝くんが何を持って死を選んだかはわからない。
名もなき二人の生きた証が、この写真集に溢れている。
私には楽園のように思えた。
当初私は、このトークイベントが見逃せないのは、母に優しくできない自分を戒めたいのかと疑っていた。
そしてこの写真集を持ち帰ることは、亡くなった人の骨を預かるに値するように思え、家族ならともかく、持ちこたえられないと思っていた。
吉田さんの写真集を作るまでの工程、この被写体のお二人と、クリエーターとのやりとりに、物を作ることは、細部に渡り、ありったけの気持ちを込められると教わった。
今、手元に置いたこの写真集に、力強さを感じている。
誰かを大切に思う気持ちは、亡くなった人への悲しみをも超えて、胸の中を温めるのかもしれない。
吉田さんのあとがきの最後は、湖の水面のよう。