HOLY'S BLOG

「アラン」その2

お父さんのアランベストも、お母さんのと同じ、形はVネックで、色は紺のリクエストだ。
ご注文主の方の、旦那様のお父様、お母様への思いが偲ばれる。

お父さんのベストに、実がたくさん付いてたりして、可愛いらしかったらいけない。
ひたむきに仕事に向かわれてきたお父さんが、着てくださるベスト。
仕事着のジャンパーの下にも、重ねられ、温かくも、かさばらないこと。
お父さんの力強さも、優しさも、内包するようなベストをと思う。

シンプルで、それは一見、何の変哲もないけれど。



編み物オタク的な話にはなるが、今回、以前から考えていた、アランセーターで試したい技法を、お父さん、お母さんのベストの中に、詰め込んでみた。

まず、両前身頃、後ろ身頃を続けて編む。
脇を継がないから、ゴロゴロしないはずだ。
リブ編みから、縄編みを入れて身頃へと繋げる。
前立ては、お母さんのは身頃を全て編み終えてから、様子を見ながら、編み付けていった。
ボタンホールが、前立ての縄編みを崩さず、その内側に収まる。
胸元に綺麗に馴染むように、調整しながら、編み付けていった。

お父さんのは、前立ても、身頃と全部ひと続きで、編んでみた。ボタンホールの位置も、身頃の丈と計算して、Vネック
へと続く。

袖口は、収まり重視で、前立てとは、向きを変えて編み付けた。

アランセーターは、通常、強撚糸と言われる、依りの強い並太以上の糸で編む。それが縄編みをしっかりと浮きあがらせ、丈夫で、温かなセーターとなる。

シェットランドヤーンで編むなんて、編み物の神様が聞いたら怒り出すかもしれない。
でも、あの色糸の深みを思うと、使わずにはいられない。
2本どりで、編むことで、自然と依りはかかってくる。
糸を落とさないように、針をしっかり動かして編むこと。

模様の作りのメリハリを付けながら、目を捻り編み進めることで、強撚糸でなくとも、模様の美しさが出せたらと思う。

正直、やり直しも何度かしたけど、新しい試みが果たせた思いだ。

この2着のベストは、雪の街の、冬本番に差し掛かる頃に、お二人に渡される。