母の味噌作り
味噌を仕込まねばと、夏から気になっていた。
味噌の瓶がひとつ開くと、ひと瓶分の味噌を作る。
秋から冬に仕込む味噌は、良い味噌ができるんじゃなかったけ。
昨日買った大豆と麹。
夕方再度、私だけ出掛けた間に、母は大豆全部を水に加していた。
おかずにも使えるようにと、大豆は多めに買ったのに。
今朝から、圧力鍋の大豆を火にかけた。
一度火から下ろしたがまだ固く、再度火にかけ、大豆はすっかり柔らかくなった。
おかずにする分は取り置かないとと、半分は冷凍用タッパーに、半分は用意した昆布と人参のさいの目切りで、昆布豆に煮付けた。
味噌仕事は母が、長年使い続けたかつて祖母が母に買った餅つき機を持ち出し、豆を潰し始めた。(餅つき機に潰せる機能がある。)
今までスーパーで買える米麹で、袋にある分量で味噌作りをしてきたが、今日は産直市で買った麹なので分量表はなく、ネットで調べた。
煮汁は別置きし、豆を潰す。
今日は、豆が柔らかすぎる程に煮たので、水分をたっぷり含んでいる。
麹と混ぜる。
煮汁と私が測っておいた塩を入れる。
母は、私が物心ついた頃から味噌を作っていた。
切らしたことはない。
母が交通事故で長期入院した時、一度だけ私が見様見真似で仕込んだ。
「あの味噌はダメだった」とは聞いてないので、一応うまく発酵してくれたのだろう。
この10年位、味噌を仕込んですっかり茶色になるまで、ビー玉をビニル袋に入れて重石とした。
重石をしたら良い味噌ができると私が聞きかじり、ビー玉を大量に買ったのだ。
大きなタッパーに入れた大きめのビー玉は、だから大切に新居にも運んだ。
母が、大きな果実酒用の瓶に、大豆と麹と塩を混ぜたものを詰める。
詰めた塊の上には、塩を絨毯のように敷き詰める。
その上に重石をするんじゃないのか?と聞くと、そんなことしなくても大丈夫だという。
ラップもしないのかと聞くと、塩がしてあるからいいと言う。
もっと平らにならさなくてもいいのと聞くと、すっかり平らにしてあるという。
麹と塩で少々のことは、なんとかなってくれるのだろう。
私が取りおいた冷凍用タッパーのが、空になっていた。
冷まさないと、冷凍庫には入れられないから、避けておいたつもりだった。
母に聞いてみると、全て味噌の中と言う。
(豆カレーにしたかったのになぁ。)
大豆の分量は増えている。
塩を足さなくては?
取り置き用だったことを告げると、少々割合が変わろうと構わないとのこと。
何を言うとるのだ若者が、と言う目で私を見ている。
少々のカビはその都度取り除けばいいとネットに書いてあった。
重石せずに味噌を作っていた時もあったのだ。
母が味噌の瓶を抱えようとしたので、私が変わって流しの下に突っ込んだ。
瓶の熱がすっかり取れているか、母が再度確認する。
あと何度、こうして一緒に味噌が仕込めるだろう。
数日続いた雨のせいか、靄のかかった光が午後の台所に届いていた。