2021.07.28
ハグロトンボ
昨日朝のこと。
手入れの行き届かないうちの庭に、黒い羽で群青色のしっぽを揺らすハグロトンボが舞っていた。
そのヒラヒラと飛ぶ姿に、クロアゲハかと一瞬思った。
葉に留まると、優雅に羽を開閉する。
ツガイになるべく、相手を探しているのか。
そんな姿を見せてくれる。
いや、彼女が来てくれたんだ。
初めて会った時の、ギャラリーで次々と「これもいいですか?」なんて言いながら、私の作ったショールや帽子を試着する彼女。
「ついさっき、お金使っちゃったから、全然ないんですよ〜」と言いながら、私に確認すると、次々気になるニットを手に取っては身につけ、「カワイイ」と繰り返す。
全然いやじゃなかった。
広めのギャラリーをヒラヒラと飛び回り、手を振りながら帰ってった。
まるで、今日のハグロトンボのようだった。
その後、私達は長い時間をかけて、友達になる。
時に、彼女の思う良心とのすれ違いで、私は心を固くし、彼女の訃報が入った時には、まずそのことを深く後悔したけど、
私達は、それが最後ではなかった。
楽しい時間で、終わっていたけど、例の件で、頻繁に連絡を取らなくなったことは確かだ。
その後、私は猛烈に忙しくなり、全くの仕事関係のない彼女とは、疎遠になった。
そのほんの半年間の間に逝ってしまった。
彼女が私に何を話したかったかを思うと、その口を噤ませてしまったのは私。
ニコニコと、見守っていてくれるだろうか。
都合の良いことばかり、考えている。