2016.05.30
母の腕時計
昨日、外出先で一緒になった友人が「今、何時?」と私が付けていた腕時計を覗いて「うわぁ、かわいい」と褒めてくれました。
嬉しいのに恥ずかしくなり、返事をしそびれてしまいました。
母の腕時計です。
母が若い頃、自分で買ったもので、長く引き出しの奥に閉まってありました。
何か探し物の折にふと出てきて、
「私が付けてもいい?」
と思い切って尋ねたら、
「もうこの小さな文字盤が見えにくいから」と、譲ってくれました。
考えたら20年近く触ってなかったのに、ネジを巻いたら柔らかく「チッチッ」と、まるで昨日も使っていたかの様に、動き出しました。
それから時々、付けています。
全体的に黒ずんでいたので、時計屋さんに相談したら、専用の布で磨くことを教えてくださいました。
私が小さな頃、母が出掛ける時、この細いチェーンの付いた留め金を器用な手付きではめていたのを、憧れの気持ちで見ていました。
その頃から、この腕時計を好きだと思っていました。
自分が付けられるようになるとは。
あの頃の母の年を、もう随分前に超えてしまいました。