あるライターさんに捧ぐ『ピアノ調律師』という絵本について
ゴフスタインの絵本の中に『ピアノ調律師』(現代企画室)という作品があります。

両親を亡くしたまだ小さな女の子、デビーは、腕の良いピアノ調律師のおじいさんと一緒に暮らしています。
おじいさんは、デビーのために朝食を用意し、ピアノを弾くことを教えます。
おじいさんは、デビーにピアニストになってくれることを望みますが、デビーは、おじいさんのような腕の良いピアノ調律師になりたいと思っていました。
彼らの街に、世界的ピアニストの演奏会が開催されることになりました。
おじいさんが、ピアニストのためにホールのピアノの調律をしている間に、デビーはおじいさんに内緒で近所のお宅にあるピアノの調律を勝手に引き受けてしまいます。
おじいさんはピアニストと共に、調律を続けるデビーを見つけると、デビーをたしなめ、そのお宅に詫びを言い、また改めてピアノを調律し直す約束をしました。
その一部始終を見ていたピアニストは、おじいさんに、デビーをピアニストに育てるより、ピアノ調律師になることを叶えてあげた方が良いことを諭します。
デビーとおじいさんはその夜、ピアニストのすばらしい演奏を聴きます。
デビーはピアニストの演奏より、ピアニストがいくら激しく弾いても音程のびくともしないピアノの音色に感動したのです。
デビーは、おじいさんのような腕の良いピアノ調律師になるために、次の日の朝から、自分のことは自分でするようになるのです。
ピアニストは、デビーに上等な調律道具を送ることを約束してくれました。
・・・
この本の帯には、ピアニストの言葉「人生で自分の好きなことを仕事にする以上に幸せなことがあるかい?」と書かれています。
私は、誰にしもの人生がそんなに素敵で、単純なものではないと思いますが、自分にも同じような体験があったことを思い出しました。
私は10代の頃から20代にかけて、自分で作詞作曲をするシンガーソングライターになりたいと思っていました。
それを望みながら、生活のために昼間はバイトに明け暮れる日々で、そんな中で「楽譜工房」という楽譜浄書の仕事につきます。
音楽には毎日触れているけれど、私が作ったのは、楽譜でした。演奏する人が見やすいように余白の美しい楽譜を作る仕事です。
それからいろいろあって、私は今、編み物を仕事にしています。→*
(詳しくはこちらをご覧ください。取材していただいた記事です)
音楽が大好きだったけど、私はその音を作る方の仕事に就き、そして今は、子供の頃から息をするように身近にあった装いを作る仕事をしています。
編み物は手段の一つで、「装いを作る」中で、1番手頃で、お金が掛からず、そして何より私が1番得意なことだったのでしょう。
それは自分の意思とは無関係に、神様からのギフトとして、私に与えられたことと今は考えています。
決して自分の人生にオッケーが出せるほど、達観も納得もまだまだできていませんが、
ふとこの絵本を通して出会ったライターさんとのやりとりを思い出す中で、ゴフスタインが教えてくれた使命みたいなものに出会うことについて、考えた朝でした。